債務整理、つまり借金を整理する際、もっとも一般的な手続きが任意整理です。しかし、任意整理ができない場合は法的整理(自己破産・個人再生)に方針を変更して解決を図る必要があります。このページでは自己破産と個人再生について説明をしています。
自己破産は債務整理の手続きのひとつで、借金を免除(借金をすべてなくす)ことができる債務者にとって非常にメリットが大きい手続きです。
借金をすべてなくすことで生活を立て直し新たなスタートを切ることができますが、リスクやデメリットもある手続きでもあります。
では、まずは自己破産の仕組みと手続きの流れについて解説していきます。
自己破産とは
自己破産は裁判所に申し立てをして、借金の全額免除「借金がゼロ」になる手続きです。
自己破産は最終的な解決方法ではありますが、借金から完全に開放される唯一の方法でもあります。
ただし税金や養育費、国民健康保険料など、特定の種類の借金は免除されません。
借金がなくなるという非常に大きなメリットはありますが、債権者の利益を確保するために、生活に必要な最低限の財産以外はすべて没収されます。
没収された財産は債権者に分配されますが、生活必需品は免除され手元に残ります。
言い換えれば、没収されるような資産を持っていない場合は影響がないとも言えます。
自宅や車、ブランド品などはすべて処分されるため、住宅を残すことは叶いません。
裁判所の手続きとなるため家族に内緒で行うことは難しく、今後5年から10年は借り入れができなくなります。
いわゆるブラックリストに残り、住所や氏名が「官報」と呼ばれる国が発行する機関紙に掲載されます。
また借り入れの原因が浪費やギャンブルであった場合は、原則自己破産は認められていませんが、裁判所が認めれば自己破産は可能です。
ギャンブルや浪費が原因の借金の自己破産は、一般的な自己破産よりハードルがあがるため、専門家に相談した上で手続きすることをおすすめします。
自己破産は多重債務者や、現在無職で生活保護中の方など、収入が不安定の方に向いている手続きです。
借金がゼロになる唯一の方法ですが、デメリットやリスクも多いため、専門家に相談の上で手続きをさせることをおすすめします。
自己破産のメリット
- 借金がゼロになる
- 生活に必要な一定の財産は手元に残せる
自己破産のデメリット
- 財産の没収・差し押さえ
- 特定の職業への就職ができない
- 官報に掲載される
- ブラックリストに登録される(信用情報)
- 連帯保証人も自己破産を余儀なくされる
同時廃止・管財事件
自己破産の手続きには、「同時廃止」と「管財事件」の2種類があり、どちらの事件となるかは裁判所が判断します。
- 管財事件:債権者に配当・分配できそうな財産がある
- 同時廃止:配当・分配できる価値のある財産がない
管財事件となった場合は、破産管財人が選任された手続きとなるため、手続きには非常に時間がかかります。
ただし個人が債務整理で自己破産を選ぶ場合は、配当・分配する資産を持っていないケースがほとんどなので、同時廃止事件として手続きをすすめることが多いと言えます。
破産手続・免責手続
破産手続と免責手続は、経済に困難な状況から抜け出すための法的手段ですが、それぞれ異なるプロセスです。
破産手続とは、裁判所に破産を申し立て、債務者の財産を債権者に配当・分配した上で、残った借金について「免責」される手続きです。
自己破産では、生活必需品や99万円以下の現金は手元に残せますが、家や車など価値ある財産はすべて手放すことになります。
つぎに免責手続ですが、債務者の支払義務を免除(借金をなくす)するための裁判所の手続きのことを言います。
消費者金融からの借金、クレジットカードやローン、家賃などの未払金は、免責の許可を受けることができれば支払いの必要はありません。
注意すべき点は、免責によって借金支払い義務がなくなるのは債権者本人だけということです。
連帯保証人がいる場合、支払い義務は残ることになるため、債権者は保証人に対して請求を行います。
よって同時に連帯保証人も自己破産をするしかない状況に追い込まれる可能性があります。
自己破産と生活保護
生活保護の受給を受けている方(受けようと考えている方)は、「自己破産すると生活保護がもらえないのではないか」「生活保護を受けていると自己破産ができないのではないか」そのように心配される方がいらっしゃいますが、自己破産をしても生活保護は受給できます。
生活保護の受給要件
- 職を失った、病気などで働けず収入がない
- 最低限の生活ができるだけの預貯金・財産がない
- 家族や親族から援助を受けられない
- 家族から援助を受けても最低限の生活ができない
- 生活保護以外に年金や国・自治体からの援助を受けていない
上記の要件からも、自己破産を含む債務整理をすることは含まれていません。
また自己破産が生活保護の受注額に影響することもありません。
自己破産後の生活
結婚
自己破産すると結婚する際に相手にバレるのではないか、と心配される方がいます。
自己破産は戸籍・住民票・パスポートなどに記録されることはありません。
記録に残るものは、官報・信用情報機関の信用情報・破産者名簿です。
信用情報機関の信用情報(俗称 ブラックリスト)と破産者名簿は非公開ですし、官報は誰でも見ることができますが、普段から官報を見ている方はほとんどいません。
これらの情報からも、何らかの記録から自己破産したことが知られてしまう可能性は限りなく低いと言えます。
ただし以下のケースでは自己破産が知られてしまう可能性があります。
- 特定の職業(士業・警備員など)に就けない職業制限
- 住宅・自動車ローン、学資ローンが組めない
- クレジットカードを持てない
旅行・引っ越し
自己破産をすると、破産手続き中の移動は制限されます。
ただあくまでも手続き中に限った話しで、自己破産が終わったのちの旅行・引っ越しに制限はありません。
また手続き中であっても冠婚葬祭などやむを得ない理由があれば、裁判所の許可を得ることで移動することは可能です。
自己破産の手続き
自己破産の流れ
- 専門家に自己破産の相談・依頼をする
- 専門家が債権者人受任通知を送付(督促・取り立てがストップ)
- 専門家が債権調査・利息再計算を行い、借金額を確定させる(過払い金調査も実施)
- 申立書作成のための必要書類を準備
- 裁判所に自己破産の申立
- 破産手続き開始
- 免責許可決定(借金がゼロになる)
自己破産の手続きは「管財事件」「同時廃止」の2種類ありますが、手続きは管財事件の方がより複雑です。
申請書類
自己破産の申し立てに必要な書類は、主に以下のとおりです。
- 申立書
- 陳述書
- 債権者一覧表
- 財産目録
- 家計収支表
- 給与明細・源泉徴収票など(収入を証明)
- 住民票・戸籍謄本
- 預金通帳の写し
- その他(説明に必要となる資料)
必要書類が多く準備するのは大変ですが、弁護士・司法書士などの専門家に依頼すれば、書類を揃えるためのノウハウを教えてくれます。
また代理で記入してくれることもあるため、自己破産をスピーディーに行うためには専門家への依頼がおすすめです。
自己破産の費用
自己破産の手続きにかかる基本費用は以下の3つ。
申立手数料
1,500円
裁判所に申し立てをする際に必要な収入印紙代。
予納郵便切手
3,000円以上(債権者数による)
自己破産手続きを行うことを債権者に通知するための郵送手数料。
裁判所によって異なりますが、債権者の数が多いほど高くなると考えておきましょう。
予納金
目安 1万円〜50万円
裁判所に収めるお金で、破産事件の種類によって金額に差が出ます。
- 同時廃止: 1万円〜3万円
- 管財事件: 約50万円
- 少額管財事件: 約20万円
債権者に配当・分配する資産がほとんどない人が自己破産する手続きを「同時廃止」と言います。
財産の差し押さえや破産管財人の選任などが不要となるため、予納金の相場はかなり低く1〜3万円低度となります。
管財事件は、債権者に配当・分配できそうな財産があるため、財産の差し押さえや破産管財人の選任が必要となり、予納金も50万円程度と高額です。
少額管財事件とは、管財事件より手続きの負担が軽減された手続きです。
管財事件の手続きが6ヶ月から1年ほどかかるのに対し、少額管財は手続きが簡素化されているため4〜6ヶ月低度。
そのため、裁判所に収める費用も20万円程度になります。
個人再生とは
では、次に個人再生の仕組みと手続きの流れについて解説していきます。
個人再生は債務整理の手続きのひとつで、裁判所を通すため手間がかかり時間を要しますが、最大で90%借金が減額となります。
債務の大幅な減額が期待できる手続きですが、その分手続きは複雑で必要書類も多く、自力で個人再生の手続きを行うのは困難です。
個人再生とは、裁判所に申立てをして借金を大幅に減額(最大で1/10程度)してもらい、残りの借金を3年から5年の分割で支払う手続きです。
原則3年で返済することが条件ですが、収入によっては5年まで延長されます。
個人再生によって減額される借金の減額率にはルールがあり、基本的には借金総額や個人の資産に応じて決まります。
任意整理とは違い、利息だけでなく元本も減額することができるため、借金の負担は大幅に軽減。
借金を最大90%減らすことができることが特徴ですが、借金の返済計画が詳細に書かれた「再生計画案」が裁判所に認められることが個人再生できる条件です。
個人再生は裁判所の関与する複雑な手続きが必要なので、費用は高くなります。
個人再生は裁判所に手続き後は計画通りに返済することが条件となるため、安定した収入がある会社員などが対象となります。
パートやアルバイトでも安定した継続的な収入があると認められれば、個人再生の手続きは可能です。
- 安定した収入がある
- 債務総額が5000万円以下(住宅ローンは除く)並び項目
個人再生はマイホームを手放さずに手続きできることから、住宅ローンを支払っている方に選ばれる傾向があります。
また個人再生は免責不許可事由がないため、借金の理由がギャンブルや浪費などあらゆるケースの借り入れでも手続きが可能という特徴もあります。
小規模個人再生とは
小規模個人再生は個人再生における基本の手続きで、裁判所に提出した再生計画に対して債権者の同意が半数以上あれば個人再生が可能です。
個人再生は計画通りに返済することが条件となるため、安定した収入があることが前提です。
小規模個人再生の要件
- 安定した収入がある
- 債務総額が5000万円以下(住宅ローンは除く)
- 再生計画に対し半数以上の債権者から同意がある(債権総額の過半数を要する債権者の同意でも可)
給与取得者等再生とは
給与取得者等再生とは、会社員などの給与収入がある債務者が経済的困難に直面した際に利用できる手続きで、小規模個人再生が成立しない場合や、給与などの一定以上の安定した収入がある人に限り認められます。
給与所得者等再生の要件
- 安定した収入がある
- 債務総額が5000万円以下(住宅ローンは除く)
- 過去7年位内に個人再生手続きをしていない
小規模個人再生との違いは、再生計画に対して債権者から過半数の同意を得る必要がなく、反対を受けても再建計画をすすめることができます。
ただし小規模個人再生のほうが結果的に借金の減額率が高くなるため、あまり選ばれることがない手続きです。
個人再生の手続きの流れ
- 専門家に個人再生の相談・依頼をする
- 専門家が債権者人受任通知を送付(督促・取り立てがストップ)
- 専門家が債権調査・利息再計算を行い、借金額を確定させる(過払い金調査も実施)
- 申立書作成のための必要書類を準備
- 裁判所に個人再生の申立
- 裁判所に再生計画案を提出
- 小規模個人再生・給与取得者等再生を選択
- 再生計画認可決定
- 計画案に沿った返済スタート
個人再生の手続きは「小規模個人再生」「給与取得者等再生」の2種類あります。
手続きの流れはほぼ同じですが、一般的には減額率が高い小規模個人再生が検討されます。
複雑で難しいと感じるかもしれませんが、専門家に依頼した場合これらの手続きはすべてお任せできるので安心です。
1 専門家に個人再生の相談・依頼をする
債務整理のノウハウがある専門の弁護士・司法書士に相談することからスタートします。
個人再生は手続きが複雑で、個人で対応することは非常に困難です。
確実に個人再生を成功させるためには、専門家に相談することが一番の近道です。
2 専門家が債権者人受任通知を送付(督促・取り立てがストップ)
弁護士・司法書士に依頼後は、債権者に対し「受任通知」を送付します。
これによって債権者が直接債務者へ連絡することが禁止されるため、この時点で督促・取り立てがストップします。
3 専門家が債権調査・利息再計算を行い、借金額を確定させる(過払い金調査も実施)
専門家に依頼した場合、2の時点で債権者に債権調査を依頼しています。
これにより借金額を確定させ、同時に過払い金調査を実施することができます。
4 申立書作成のための必要書類を準備
個人再生の申立てに向け、債務者の収入・支出・財産などについて調査を行い、手続のための必要書類を準備します。
- 申立書(小規模個人再生)
- 陳述書
- 債権者一覧
- 財産目録
- 家計収支表
- 給与明細・源泉徴収票など(収入を証明)
- 清算価値算出シート
- 再生計画案
- 返済計画表
裁判所によって必要書類は異なります。
提出が求められる書類は多岐にわたるため、書類作成のための情報収集には時間がかかります。
専門家に依頼した場合、個人再生のプロフェッショナルなら手続きに慣れているためスムーズに準備がすすむメリットがあります。
5 裁判所に個人再生の申立
必要書類をすべて揃えたら、裁判所に申立を行います。
裁判所によっては個人再生委員を選任し、面接や履行テストが行われます。
※履行テストとは、債務者が再生計画案どおりに返済を続けることができるか半年間行うテストのこと。
6 裁判所に再生計画案を提出
個人再生は計画通りに返済することが条件なので、5と同時に再生計画案を裁判所に提出します。
7 小規模個人再生・給与取得者等再生を選択
個人再生の要件を元に、小規模個人再生・給与所得者等再生どちらの手続きを行うか決定します。
- 小規模個人再生: 将来の収入から返済できる額
- 給与所得者等再生: (年収 − 最低生活費) × 2年分以上
8 再生計画認可決定
債権者の同意を得たうえで再生計画案が決議され、裁判所が認可された段階で手続きは完了します。
小規模個人再生を希望していても、この時点で債権者の過半数の同意が得られなければ強制的に「給与所得者等再生」の手続きとなるケースもあります。
9 計画案に沿った返済スタート
再生計画案に基づき、返済を開始します。
個人再生|よくある質問
車は手放さずに手続きできますか?
生活に欠かせない車は手放したくないという方は多くいますが、手元に残せるケース、残せないケースがあります。
例えば自動車ローンを完済済み、銀行でローンを組んでいる場合、車を手元に残すことが可能です。
一般的に信販会社などの自動車ローンは、ローン完済までは車の名義は信販会社などのローン会社となります。
この場合は車を手元に残すことができません。
先述したローン完済済み、銀行でローンを組んだというケースは、車の名義が個人再生をする本人名義になっていれば手元に残せる、という仕組みです。
また本人名義ではない配偶者などの家族名義の場合でも、車を手元に残すことはできます。
個人再生の費用が払えるか分からない
借金に追われ生活が苦しいため、債務整理をお考えの方の中には、依頼費用が払えないから相談できないと考える方も多くいらっしゃいます。
弁護士や司法書士などの専門家に個人再生手続きを依頼すると、手続きがスムーズに進み失敗のリスクが減るというメリットがありますが、費用はそれなりに高額です。
相場は30万円から50万円程度と言われていますが、債権者数が多い場合は費用がさらに上る可能性もあります。
分割払いや後払いに対応している専門家も多く、基本的に相談は無料で受け付けてくれます。
借金の不安を長い間抱えている方は、まずは無料相談で費用についても相談してみることをおすすめします。
個人再生のメリットは?
個人再生には以下のようなメリットがあります。
- 借金を大幅に減額できる(最大で90%)
- 自宅を手放さなくてもできる
- ギャンブルや浪費での借金でも手続きができる
- 弁護士・司法書士などの専門家を通せば、督促・取り立てが止まる
住宅ローン返済中の家(マイホーム)は残しつつ、個人再生で借金を整理することができるのは大きなメリットです。
ただし住宅ローンは減額できません。
個人再生のデメリットは?
個人再生にもデメリット・リスクは存在します。
- 安定した収入がなければそもそも手続き不可
- 裁判所を通す手続きなので手間も時間もかかる
- 借金が免除されるわけではない
- 信用情報機関・官報に掲載される
個人再生には借金を元本から減額できるメリットがありますが、そもそも一定の収入がなければ手続きを行うことさえできません。
厳しい要件を満たしてはじめてできる手続きです。
裁判所を通すため手間も時間もかかり、心身ともに疲弊する可能性もあります。
また借金が免除(ゼロ)になるわけではなく、個人再生後は残った借金を払い続ける必要があります。
減額後の借金を原則3年(最長5年)で払うことは忘れてはいけません。
個人再生は裁判所を介した手続きとなるため、個人で対応するのは大変難しい手続きです。
弁護士や司法書士などの専門家に依頼することで、書類などの収集がスムーズとなり、ミスのない手続きが可能となります。
不安がある方はまずは専門家へ無料相談してみることをおすすめします。