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2024年 | 現場の人だからこそ書ける、任意整理する前から完済するまでの債務者のためになる話

多重債務者の存在

多重債務者と呼ばれる人たち

消費者金融やクレジットカードの利用で、複数社から借入れがある状態の人を多重債務者と呼びます

たとえば、ひとつの貸金業者からの借入れ額が上限に達し、その返済のためにまた別のところからお金を借りる‥、それが雪だるま式に増えてゆき、何社にもわたって何十万、何百万の借金を抱えてしまいます。

そのような状態になってしまうと、毎月利息を払うだけで精一杯になり、借りたお金がなかなか減らず、いつかは返済不能に陥ってしまうのです。

 

あなたも多重債務者になる可能性がある

多重債務者になってしまった人でも、借りた当初はまさか自分がそうなるとは思っていないでしょう。
はじめから多重債務者になろうとしてお金を借りるような人はいないはずです。
軽い気持ちで借り始めたものの、利息が高くてなかなか元金を減らせず、前で述べたような負のスパイラルに陥ります。

また、最近ではインターネットの普及によって、ネット上で簡単に申し込み等が出来てしまうため、使い方を誤るとそのサイクルはさらに加速してしまいます。

 

多重債務に陥る人の傾向

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大抵のものごとには傾向があり、多重債務者もその例外ではなく「なりやすい人」の特徴があります

ギャンブルや浪費癖は代表的な要因ですが、人の誘いを断れないような真面目さが意外にもその特徴として挙げられます。
他人に流されてしまい、身の丈に合わない生活スタイルになっている人は意外と多く存在します。

また、「それは本当に必要なもの?」と思えるようなことにお金をかけている人が多いのも特徴のひとつと言えるでしょう。
たとえば、携帯電話のコール音がいわゆる「待ち歌」と呼ばれる有料サービスを利用しているケースです。
普段の生活では、あまり出くわさないこの「待ち歌」も、債務者の人々の中ではとても多く見かけます。

もちろん、それ自体が悪いというわけでは決してなく、しっかりと計画性をもって楽しむ分には何事も個人の自由です。
しかし、簡単に言ってしまうと、それも無駄遣いの傾向のひとつではないかと思います。
計画性のある人であれば、「これは自分に必要ないからやめておこう」と思うようなことでも、多重債務者になりやすい人は、その辺りの自制心が欠けている傾向があります。

 

普段の生活に潜む借金のワナ

先で述べたように、個々の性格等によるところが大きいことが多重債務の傾向ではありますが、ちょっとした不注意や、また慎重さの欠如によって気付かないうちに借金をしてしまう場合もあります。

たとえば、銀行口座の残高がマイナスになると自動的にカードローンの融資を受けてしまっていたり、クレジットカードの支払方法が、最初からリボ払いに設定されていることもあります。
銀行口座の場合、マイナスになれば当然それは借金になりますが、自分が自由に使える枠だという勘違いに陥ります。
また、クレジットカードのリボ払いは、たくさん買い物したのに月々の支払額が少なく、これなら簡単に払えるという油断によって、気づかないうちに借入れ額がどんどん膨れ上がっていきます。

 

多くの人が「自分には関係ない」と思っている

このように、最初はそんなつもりがなくても多重債務者への道を踏み出してしまう人は多くいます。

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お金を借りるということはどのようなことかを、ひとりひとりがしっかり理解しておかなければなりません。

しかしながら、お金の問題というのは非常にプライベートなことであり、他人から教えてもらう機会はそう多くないでしょう。
貸す側も商売ですから、こう言ってはなんですが借りてもらうように仕向けることも営業手段のひとつです。

また、ものごとを理解する能力も、残念ながら個人差がありますので、「これは危険だな」という判断が難しい人もいます。
「自分には関係ない」という油断を捨て、できるだけ慎重に行動することが、とてもシンプルですが最も大切なことでしょう。

 

借金問題の救済措置「債務整理」

もう払えない!そんなときどうすればいい?

  • 沢山の借金を抱え、これまでなんとか踏ん張って払い続けてきたけど、もうこれ以上は払えない‥。
  • そもそも、払えなくなったら自分はどうなってしまうのか?そんなことを考えていると不安で夜も眠れない‥。

自分ではどうしたらいいのかわからず、ひとりで抱え込んでいる人もいるでしょう。
でも大丈夫、借金問題を解決するための手段はもちろんあります。

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自分に合った解決方法が必ず見つかります。

 

もっとも身近な手続きは任意整理

借金を整理する方法はざっくりと分けた場合、「裁判所を通す」か「直接相手と和解する」かということになります。

自己破産や個人再生などは、借金が免除されたり大幅に減額される可能性のある特別な制度ですが、いずれも裁判所を通す必要があり、沢山の書類を準備しなければならない等とても複雑な手続きです。

一方、貸金業者と直接話し合ったうえで、残った借金を分割で返済していくのが任意整理です。
弁護士や司法書士が代理人となり、可能な限り負担の少ない金額で、現実的な返済計画を目指して交渉することになります。

 

過払い金は返ってくるのか

巷でよく耳にする過払い金。
借金をしている人なら「自分もその対象かも?」と一度は思ったことがあるでしょう。
一時期はどこの事務所も過払い金のテレビCMをやっていて、興味がないひとでも一度は見たことがあるというくらいでした。
結論を先に言うなら、今でも過払い金は一部で発生しており、実際に取り返している人もいます

過払い金というのは、その名の通り「払う必要のなかった高い利息を払い過ぎていたので返してください」というものです。
そして最大のポイントは、そのような高い利息はいつ頃存在していたのかということに尽きます。

まず、ほぼ全ての貸金業者は2007年頃を最後に、過払い金の対象となる利率での貸し付けを終了しています。
もちろん、中には例外もありますが、それより後からの借入れであれば過払い金が発生している可能性は極めて低いと言えるでしょう。
また、過払い金は完済して10年経つと時効になってしまい、請求する権利を失います

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これらの条件をすべてクリアしていれば、取り返せる可能性は出てきます。

もちろん、貸金業者や取引内容によってはそもそも利率が低いものもたくさんあります。
我こそはと思われる方は、一度弁護士や司法書士に相談してみましょう。

 

返さなくて済むかもしれない‥借金の消滅時効とは

一般的な貸金業者からの借入れであれば、最後の取引から5年経過すれば時効になっている可能性があります。

この話を聞くと「借りたお金を返さなくてもいいの?」と多くの方は驚かれます。
ですが、これは紛れもなく法律で認められた制度なのです。
中には「お金を借りたくせになぜそんなことが認められるの?」と嫌悪感を抱く人もいますが、もちろんこれはきちんとした理由があって、法律で決められていることなのです。

とても簡単に説明するなら、あまりに古いことはある程度整理していかないとキリがないということです。
そして、自分の権利をしっかり確保して行動しておかないと、時期が来ればそれを失ってしまいますよ、というお話です。

ですが、ここでよくある間違いとして、5年経過したら自動的に時効になると思って放置してしまうというケースです。
借金の時効は、きちんと援用の手続きを取らないと成立しないので注意が必要です。
また、過去に裁判を起こされている場合は、時効の要件となる期間が10年に延びるため、弁護士や司法書士に手続きを依頼する際には、しっかりと調査してもらいましょう。

 

債務整理の現場レポート|依頼から解決までの道

とにかくまずは相談

ここでは、とある相談者からの依頼を例に挙げてみましょう。

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仮にAさんとします。

Aさんは還暦を少し過ぎた既婚の男性で、とても落ち着きのある話し方をする誠実な印象の方でした。
失礼ながら、あまり借金をするような人には思えなかったのですが、その想像は当たっていました。
お金を借りていたのは、Aさんではなく彼の兄だったのです。

その兄は遠方で一人暮らしをしており、障がいをお持ちで仕事が出来ずに在宅介護を受けておられる状態でした。
ある日、Aさんが兄宅を訪れたところ、某消費者金融からの督促状が見つかり、借金が発覚したとのこと。

Aさんの兄は自分でどうすればいいのか判断が出来ずに、長らく放置されていたようでした。
「依頼する費用や借金の支払いはすべて自分が払う」というAさんの申し出により、依頼を受けることになります。

 

借金の現状を把握する

債務整理の依頼を受けると、まずは実際にどのような状態にあるか、正確な情報を把握するところから業務が始まります。

代理人事務所から貸金業者宛に通知を送り、その債務者の代理人になったことを知らせます。
しばらくすると、事務所宛に債権届出書という、借金の内容が詳しく書かれた書類が届きます。
そこには、誰がいつからいくら借りていて、いついくら返済してきたか、結果的に今いくらの借金が残っているか等が書かれています。

Aさんの兄のケースでは、一見すると百万単位の借金が残っており、貸金業者側も当然の権利としてそれを請求する旨が書かれていました。
しかし、その日付をよくよく見ると、最後に取引があった日から5年以上をわずかに超えているようでした。

 

適切な方針の決定

借金の消滅時効というものは、要件を満たしていても援用手続きをしない限り永遠に請求は続きます
ですが、Aさんが兄の借金を法律家に相談したことで、それが時効になっている可能性が出てきました。

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ここが運命の分岐点です。

仮にAさんが貸金業者に直接連絡していたなら、当然ながら時効の説明などされるはずもなく、返済する方向で話はまとまっていたでしょう。
その前に専門家に相談したことで、時効援用によって払わずに解決するという選択肢が生まれました。
Aさんは多少の罪悪感を覚えながらも時効援用の道を選び、無事に債務整理の依頼は完了したかに見えました。

 

本人が把握していないことも沢山ある

無事に一件落着と思ったのも束の間。
それから数か月後、再びAさんから相談の電話が入ります。

今度はまた別の貸金業者からの督促状が届いたというのです。
このように、借りている本人がどこからどれくらい借りていたかを、把握していないケースも非常に多く見かけます。
聞くと、大手消費者金融で取引は随分長いようでしたが、前回のように時効の援用ができそうな内容ではありませんでした。
こちらもその時点で百万円以上の請求額になっていました。

いずれにしても、前回同様に整理をすべく調査を開始。
すると、取引の開始時期が随分古く、取引初期の利息はいわゆる過払い金が発生する利率のものでした。
それを考慮した引き直し計算を実行した結果、百万円以上残っていると思われた借金は、20万程度まで減額されたのです。

 

貸金業者との和解、そして本当の解決へ向けて

過去の過払い金によって減額された借金を無利息で、そして現実的な月額で支払うという内容で和解をまとめ、Aさんからの依頼は再び解決に至りました。
2件の貸金業者からの請求は合計で300万円にも迫る額でしたが、ひとつは時効援用、もうひとつは過払い金で大幅な減額という、
最近ではなかなかお目にかからない理想的な結果を得られたと言えるでしょう。

Aさんには、今後も同じような請求が来る可能性を踏まえて、信用情報の開示をすすめておきました。
もちろん、それだけで全ての借金が把握できるわけではありませんが、幸いAさんからの連絡はそれから3年経過した今でもありません。

 

任意整理における最近の動向

年々厳しくなる和解の条件

ひとつ例を挙げるとすれば、十数年前頃から始まった過払い金請求の全盛期であれば、任意整理においての和解は、今と比べ物にならないくらいの好条件ばかりでした。

もちろん、当時から一部の街金業者等は、将来利息のカットに応じなかったり、遅延損害金を満額付加するようなところもありました。
しかし、大手消費者金融等は利息を一切付けない元金のみの和解に応じたり、分割回数も5年を大幅に上回るような長期計画での和解が実現していたのです。

中には元金の端数をカットしてくれたり、一括であれば元金自体を5割近く減額してくれたりと、債務者にとってはまさに救いの神と思えるような、柔軟な対応で債務者の更生に一役も二役も買ってくれていたと言えるでしょう。

 

過払い金請求の衰退

周知のとおり、現在は過払い金が発生する取引自体が非常に少なくなり、貸金業者としてはようやく一息といった状況でしょう。

債務者が貸金業者に請求する過払い金と、貸金業者が債務者に請求をする任意整理等は、お互いの優勢と劣勢が絡み合ったいわばシーソーゲームの状態でした。
現在は、過払い金請求の衰退によって、そのパワーバランスが圧倒的に貸金業者側に傾いていると言えます。

請求されるものがないのであれば、遠慮なく自分たちの権利を主張しようと言ったところでしょうか。
債務者側への忖度が全く不要になれば、それも当然の結果というところでしょう。

 

それでもメリットがなくなるわけではない

主に任意整理を取り巻く状況が、非常に厳しくなっていることは紛れもない事実です。
将来利息カットに応じない貸金業者も、ひとつまたひとつと増えてきています。

かつては元金のみの返済に応じてくれていたところも、和解するまでの時間経過による損害金を満額付加するのが当然になっていたりします。
取引期間の短いものに対しては、特に厳しい条件が突き付けられます。

金額が増えるだけであればまだ良いほうで、分割回数の縛りは債務者にとって任意整理のメリットを大きく減少させる要因になります。
短い取引でロクに利息を払ってこなかったお客を、甘やかす理由などないと言われれば、それももっともなお話です。
ただ、それでも一旦支払いを止めて状況を整える時間を得られることは、先が見えなくて困惑している債務者にとってはは一筋の光です。

そして何より、今でも利息カットに応じてくれる貸金業者は沢山残っています
たとえ和解条件が厳しくても、借金を一度整理して出直すという作業は、精神的にも非常に良い作用をもたらしてくれるでしょう。

 

専門家に相談する前に

相談したいけど何から話せばいいの?

借金の悩みを専門家に相談することに決めたが、具体的にどういう話をすればいいのか?
そう考えて電話をかける手を止めてしまう人もいるでしょう。
もちろん、どこの事務所も大抵は親身になって聞いてくれるはずですから、何も考えずにとりあえず電話してみるというのも大歓迎です。

「何から話したらいいですか‥」という第一声は非常に多いですし、相談を受ける側もそんなことには慣れています。
こちらが聞きたいことが沢山あるので質問に答えてくれるだけでOKという事務所が大半を占めるでしょう。

 

聞きたいことは事前に整理しておきたい

しかしながら、相談を受ける側が知りたいことを質問しても、的を得た答えがなかなか返ってこないこともあります。
お互い初めて話す者同士での会話ですから、それも仕方のないことです。

可能なら、事前に質問事項を整理しておければ理想的ですが、それも難しければ少なくとも自分が不安に思っていることは何か、ひとつでも言葉にできる状態にしておくと良いかもしれません。

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相談する側もされる側も人間ですから、借金相談も人間同士の対話です。

言葉で伝えられることには限界がありますが、少しでも気持ちが伝わることで会話の流れが円滑になる可能性はあるでしょう。

 

具体的にはまず数字

借金問題の相談で、一番重要なのはなんと言っても数字です。

必要な情報はほぼ全て数字と言っても過言ではありません。
借金の金額、取引期間、月々の支払額、収入の額‥などはもちろん、生活に必要な支出がどのくらいかも非常に重要です。

収入に対して、どのくらいの支出があり、返済に使える額はこれくらい‥ということが分かればある程度の判断が出来ます。
住宅ローンの額や賃貸なら家賃の金額、水道光熱費、携帯電話やネット回線等にかかる通信費、その他のローンや保険類。
可能であれば事前に把握しておけば、一度の相談で欲しかった答えが得られる可能性が高まるでしょう。

そして最後に、専門家はもちろん頼れる存在ですが、解決の手助けをすることしか出来ません。
問題解決を目指して行動するのはあなた自身なのです。

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必ず解決するという強い気持ちが、何にもかえ難いで最も必要なことなのです。

 

この記事を書いた人
執筆者:oden
新卒で大手司法書士事務所に入所し、知識ゼロから債務整理業務の補助者として業務に当たる。
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