時効完成への道のり
時間の経過だけでは判断できない!時効の中断(更新)とは
時効の要件としてとにかく5年という時間の経過が必須になるのですが、ある一定の条件で時間の進行が止まり、そこでリセットされてしまいます。
これを時効の中断といいます。
なお、この中断という呼び方は2020年の民法改正によって「時効の更新」に変更されました。
これにより、中断という言葉の持つ曖昧さ(一時停止のようなニュアンス)を回避し、更新という言葉で完全にリセットされるという意味が分かりやすくなったと言えるでしょう。
つまり、読んで字のごとく時効完成に向けて進んでいた月日のカウントが、一定の事象によって振り出しに戻されるということになります。
では、いったい何が起これば中断になってしまうのでしょうか。
まず、最も多いのは先にも述べた「裁判手続きによる請求」です。
たとえば、返済を止めてからもう間もなく5年というところで、貸金業者から裁判を起こされてしまうと、そこで時効は中断してしまいます。
ここで大事なのは、その裁判の時点で支払いを止めてから5年経過しているかしていないか?です。
5年以上経過していれば、先でも述べたようにまだ時効で解決できる可能性は残っています。
しかし、5年経過前であれば残念ながらその時点では時効になることはありません。
一定の貸金業者や債権回収会社の中には、その時期をしっかりと管理して時効完成前にきっちり裁判を起こしてくるところもあります。
借金の存在を認めてしまう「債務承認」とは
まず、債務承認とは「自分が債務を負っており、返済の義務があることを認める」という意味です。
そうすることで、たとえ時効成立の要件である5年や10年以上経過していたとしても、時効期間のカウントはリセットされ、振り出しに戻ってしまうのです。
では、どのような行為が債務承認に該当するのでしょうか。
主に「債務を一部でも返済する、債務を認める書面への署名捺印、返済の猶予を求める言動」が挙げられます。
これらの債務承認のうち、専門家への相談で最も多いケースは3番目の「返済の猶予を求める言動」についてです。
次の項目で例を挙げてみましょう。
「今は払えないので待って欲しい」と言ってしまった!
借金問題を扱う事務所では時効についての相談も非常に多く、そのうち債務承認に関するものも一定数見かけます。
その中で最も多いのは、債権者から突然の電話や自宅訪問を受け、その場をしのぐために「今は払えないから待って欲しい」などと言ってしまったが大丈夫でしょうか?といった相談です。
もちろんこれは、債務承認に該当しますので本来ならそこで時効はリセットされます。
しかし、現実的な実務の世界では、このケースで債務承認を証明できる例はあまり多くありません。
つまり「債務を承認をしたという証拠」が正確に残っていないことが多いのです。
貸金業者の中には、電話の通話記録を正確に残しているところも稀にありますが、何年何月何日に債務を承認する発言があった、という漠然とした記録では完全に証明出来ない可能性があります。
そのため、こういったケースでの「言った言わない」の争いは、時効援用の現場で時折起こるのです。
多くの場合、お互いが引かずに話は平行線をたどり、釈然としないまま塩漬けになるようなこともあるでしょう。
いずれにしても、この発言があればもう絶対に時効援用できないかと言われたら、決してそんなことはありません。
可能性は残されていますので、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
自分で判断せずに必ず相談を!
突然の請求を受けて、冷静に行動できる人はそう多くはないでしょう。
しかし、これまで挙げたような事例のように、自分で思っていることと実際は違うことも沢山あります。
思考がポジティブ過ぎるとそのまま放置ということにもなってしまいますので、それは絶対に避けましょう。
ただし、もうダメだ…と諦めて債権者の言いなりになってしまうのも少し待ってください。
思っていたよりもずっと簡単に解決できる可能性は、どこかに残っているかもしれません。
頼れる専門家が、悩めるあなたに救いの手を差し伸べてくれることでしょう。
この記事を書いた人
執筆者:oden
新卒で大手司法書士事務所に入所し、知識ゼロから債務整理業務の補助者として業務に当たる。
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